2019年3月、私は49歳で会社を辞めました。
早期退職でした。
長年勤めた会社を辞める最後の日。
普通なら、
「今日で会社員生活も終わりか」
「長かったな」
「明日から自由なんだ」
そんなことを考えて、感慨深い一日になりそうなものです。
でも、私の場合は違いました。
正直なところ、最後の出勤日のことをほとんど覚えていません。
大きな感動もなかった。
寂しさもなかった。
「ついに自由になった!」という強烈な解放感も、記憶には残っていません。
なぜだったのか。
今振り返ってみると、私の中では最終出勤日より前に、すでに会社員生活が終わっていたからだと思います。
早期退職が決まっても、すぐに辞められたわけではなかった
早期退職の募集があってから、実際に会社を辞めるまでには10か月ほどありました。
「辞められることが決まった。あとは気楽に過ごせばいい」
そんな10か月ではありませんでした。
その間にも仕事はあります。
しかも、かなり大変な仕事が残っていました。
私にとっては、それを無事に終わらせることの方が重要でした。
「もうすぐ辞められる」
というより、
「まず、これを何事もなく終わらせないといけない」
という気持ちだったと思います。
そして、
「これさえ終われば、本当に終わりだ」
という気持ちもありました。
私の会社員生活が終わったのは2月だった
その大きな仕事が終わったのは、2019年2月ごろでした。
その時、私は、
「これで仕事は8割方終わったな」
と思いました。
実際の退職は3月末です。
でも今振り返ると、私の中で会社員生活が終わったのは、最終出勤日ではありません。
この2月の大きな仕事が終わった時だったと思います。
長年勤めた会社の最後の日よりも、こちらの方が私にとっては大きかった。
最後に残っていた重い荷物を、ようやく下ろしたようなものだったのかもしれません。
その後は、もう数字を追いかけなかった
大きな仕事が終わってからも、もちろん会社には行っていました。
私は営業でしたから、お客さんのところにも行きました。
ただ、それまでのように、
「もっと数字を上げよう」
「もっと売上を作ろう」
と頑張ることは、もうありませんでした。
お客さんのところへ行って、話をする。
必要なことはする。
辞めるからといって、周りに迷惑をかけたり、お客さんに失礼なことをしたりしない。
そのくらいでした。
もう自分の中では、会社員として何かを積み上げていこうという気持ちはなかったのだと思います。
昇進することもありません。
来年の数字を考える必要もありません。
会社での自分の将来を考える必要もありません。
ただ、残された時間を普通に過ごしていました。
最後の出勤日は、ほとんど覚えていない
最後に出勤したのは、3月21日ごろだったと思います。
でも、その日のことをほとんど覚えていません。
長年勤めた会社を辞める日なのだから、もっと何か特別な感情があってもよさそうです。
ところが、そうではありませんでした。
自分の荷物を片付けたり、身の回りを整理したりして、
「早く帰りたいな」
そんな感じだったと思います。
寂しかったという記憶もありません。
「これで人生が変わるんだ」という高揚感もありません。
ドラマの最終回のような退職ではありませんでした。
今考えれば、それも当然だったのかもしれません。
私にとっての会社員生活は、すでに2月に終わっていたからです。
「明日から自由だ」という朝もなかった
退職した翌朝、
目が覚めて、
「もう会社に行かなくていいんだ!」
と感動した。
そんな話もありません。
私は単身赴任をしていたので、最後の出勤が終わった後も、住んでいたところを片付けなければなりませんでした。
3月22日から月末までは有給休暇を取り、その間に引っ越しの準備や部屋の片付けをしていました。
ですから、
「会社員最後の日」
と
「自由になった最初の日」
の境目が、はっきりしていなかったのです。
会社には行かなくなった。
でも引っ越しの準備はある。
それが終わって家に戻る。
そして、そのまま退職後の生活が始まった。
そんな感じでした。
退職したからといって、特別なことは始めなかった
会社を辞めた後も、
「さあ、今日から第二の人生だ」
と何かを始めたわけではありません。
その時にやりたいことをやっていました。
テレビを見たければテレビを見る。
パソコンで何か調べたければ調べる。
釣りに行きたければ釣りに行く。
それだけです。
朝起きて、
「今日は何か有意義なことをしなければ」
とも思いませんでした。
新しい人生の目標を作ろうとも思いませんでした。
その時その時の自分の感情で、時間を使っていました。
そして、それで困ることもありませんでした。
早期退職は、もっと劇的なものだと思われているのかもしれない
会社を辞めるというのは、人生の中では大きな出来事です。
特に49歳で会社員生活を終えるとなれば、なおさらでしょう。
でも、大きな決断だからといって、その瞬間に大きな感情が湧くとは限りません。
少なくとも私はそうでした。
最終出勤日に涙が出たわけでもない。
ものすごい解放感に包まれたわけでもない。
翌朝から世界が違って見えたわけでもない。
気がつけば会社に行かなくなり、そのまま今の生活が始まっていました。
そして7年以上たちました。
私にとっての「最後の日」は、退職日ではなかった
今になって考えると、私にとって会社員生活最後の日は、会社へ最後に出勤した日ではなかったのだと思います。
2月に、あの大変な仕事を終えた日。
「これで8割方終わった」
と思ったあの日です。
あの仕事を無事に終えれば、もう大きな仕事は残っていない。
あとは普通に仕事をして、会社を去ればいい。
自分の中では、そこで一区切りついていました。
だから最終出勤日に、大きな感情がなかったのかもしれません。
会社員生活の終わりというのは、退職辞令をもらった日でも、社員証を返した日でも、最後に会社のドアを出た日でもない。
自分の中で「もう終わった」と思った日が、本当の最後の日なのかもしれません。
私の場合、それは3月ではなく、2月でした。
そして、その後に始まった早期退職生活も、特別な号砲とともに始まったわけではありません。
いつの間にか始まって、いつの間にか日常になりました。
今振り返ると、それが私の早期退職の始まりだったのだと思います。


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