先日、黒字企業でも早期退職を募集しているというニュースを読みました。
東京商工リサーチの調査によると、2026年1月から9月に早期・希望退職を募集した上場企業は22社。そのうち14社が黒字企業だったそうです。
赤字で経営が苦しい会社だけでなく、黒字企業でも人員構成や事業の見直しのために早期退職を募集しているわけです。
こうしたニュースを見ると、私自身が早期退職したときのことを思い出します。
私は2019年3月、49歳で会社を辞めました。
利用したのは、会社の早期退職優遇制度です。
今回は、実際にこの制度を利用した私の経験と、早期退職を考えている人に伝えたいことを書いてみたいと思います。
私の会社では早期退職の募集が珍しくなかった
私が勤めていた会社では、私が40歳くらいの頃から、定期的に早期退職優遇制度の募集が行われるようになりました。
最初に制度が発表されたときは、職場にも少しざわつきがありました。
「会社はリストラを始めるのではないか」
そんな雰囲気があったと思います。
ところが、その後も2年おきくらいに募集が行われるようになると、社員も次第に慣れていきました。
「ああ、また募集が出たのか」
そんな受け止め方になっていたと思います。
ただ、同じ制度でも、年齢によって感じ方は違ったように思います。
40歳くらいの社員は、まだあまり自分のこととして考えていない。
一方、50歳が近づいてくると、早期退職が現実的な選択肢になってきます。
私もそうでした。
仕事を辞めたいという気持ちは以前からありましたが、実際に退職できるかどうかは、また別の話だったのです。
43〜44歳のときは、辞めたくても辞められなかった
私は41歳くらいから、早期退職に向けたライフプランを作り始めました。
100歳までの生活費を試算し、どれくらいの資金があれば会社を辞められるのかを考えていました。
43〜44歳の頃にも、早期退職優遇制度の募集があったと記憶しています。
しかし、そのときは応募しませんでした。
理由は簡単です。
お金が足りなかったからです。
当時は子供たちがまだ学生で、教育費がかかっていました。
貯蓄もそれほど多くありませんでした。
さらに、当時の退職金は、49歳で辞めたときと比べると少ない金額でした。
ベースとなる退職金も少なく、早期退職制度による上乗せ額も、それほど大きくなかったのです。
ライフプランで計算してみても、退職後の生活は成り立ちませんでした。
だから、辞めませんでした。
仕事を辞めたい気持ちはあっても、辞めた後に生活できなければ意味がありません。
早期退職優遇制度があるからといって、誰でも辞められるわけではないのです。
49歳で、ようやく辞められる条件が整った
それから5年ほど経ち、49歳のときに再び早期退職優遇制度の募集がありました。
私は「また出たか」と思うと同時に、「辞めるチャンスが来た」と感じました。
43〜44歳の頃と比べると、状況は変わっていました。
まず、5年間勤め続けたことで、ベースとなる退職金が増えていました。
さらに、早期退職優遇制度による上乗せ額も大きくなっていました。
貯蓄も増え、子供たちの教育費の負担も以前とは違っていました。
そうした数字をライフプランに当てはめて計算してみると、今度は退職後の生活が成り立つ見通しが立ちました。
「これなら辞められる」
そう判断したのです。
もちろん、将来のことがすべて計画どおりになる保証はありません。
それでも、少なくとも自分で計算した範囲では、再就職しなくても生活できると考えました。
そして、49歳で早期退職しました。
再就職すれば何とかなる、とは考えなかった
早期退職優遇制度を利用する人の中には、退職金を多くもらって会社を辞め、その後は再就職しようと考える人もいると思います。
しかし、私は再就職を前提にしていませんでした。
というのも、以前に早期退職した先輩たちの話を聞いていたからです。
私が40代前半の頃、制度を利用して会社を辞めた先輩たちがいました。
ところが、思ったような再就職先が見つからず、結局は希望とは違う職場で働き始めたという話を聞いていました。
会社には再就職支援制度もありました。
しかし、私が当時見聞きした範囲では、希望どおりの再就職につながるとは限らず、制度が十分に活用されているようにも感じられませんでした。
もちろん、これは私が勤めていた会社での話です。
すべての会社で同じことが起きるとは限りません。
それでも、私は「再就職すれば何とかなる」とは考えないほうがいいと思いました。
特に、再就職しなければ生活できない人は、慎重に判断したほうがいいと思います。
すでに次の勤務先が決まっているのであれば、話は別です。
また、介護など、次にやりたい仕事が具体的に決まっていて、就職の見通しがある人もいるでしょう。
しかし、何も決まっていない状態で、「辞めてから仕事を探せばいい」と考えるのは、少し危険かもしれません。
50歳前後で、自分の希望する条件の仕事が簡単に見つかるとは限らないからです。
私は、そうしたリスクを考え、再就職しなくても生活できることを条件に早期退職を決めました。
2年後、もっと良い条件で早期退職の募集があった
実は、私が49歳で退職した2年後にも、会社は早期退職優遇制度を募集しました。
そして、そのときの条件を聞いてみると、私が退職したときよりも良い条件だったのです。
正直に言えば、その話を聞いたとき、
「あと2年待っていればよかったかな」
という考えが、一瞬頭をよぎりました。
もし51歳まで働いていれば、もっと多くの退職金を受け取れたかもしれません。
しかし、すぐに思い直しました。
当時の私の精神状態を考えると、そこからさらに2年間働き続けるのは難しかったと思うからです。
私は、仕事が本当につらくて会社を辞めました。
もう、これ以上働き続けたくない。
そんな気持ちでした。
確かに、金銭面だけを考えれば、51歳まで働いたほうが有利だったかもしれません。
でも、その2年間を働き続けることが、自分にとって良かったとは思いません。
だから私は、49歳で辞めたことがベストなタイミングだったと考えています。
退職金の金額だけで、早期退職の良し悪しは決められないのです。
退職金が多いからといって、生活が安泰とは限らない
私は、早期退職優遇制度を利用するうえで一番大切なのは、辞めた後のライフプランだと思っています。
これは早期退職に限った話ではありません。
定年退職でも同じです。
退職金というまとまったお金を受け取ると、気持ちが大きくなる人もいるようです。
退職を機に家を買ったり、別荘を買ったり、高級車を購入したり。
長年働いてきた自分へのご褒美として、大きなお金を使いたくなる気持ちは分からなくもありません。
しかし、退職金が多いからといって、これからの生活に余裕があるとは限りません。
退職後は、基本的に給与収入がなくなります。
年金が始まるまでの生活費も必要ですし、年金を受け取るようになってからも、支出がなくなるわけではありません。
住宅の修繕費や家電の買い替え、医療費などもかかります。
退職金を受け取った勢いで高額な買い物をしてしまい、後になって生活が苦しくなる。
そして、結局は再び働かなければならなくなる。
そういった話も耳にします。
私は、お金を使うこと自体が悪いとは思いません。
旅行に行きたいなら行けばいいし、欲しいものがあるなら買えばいい。
ただし、それはライフプランの範囲内で、ということです。
必要なものに必要なお金を使う。
でも、まとまった退職金が入ったからといって、急に財布の紐を緩めない。
それが大切だと思っています。
早期退職優遇制度は、辞めたい人にとってチャンスにもなる
黒字企業でも早期退職を募集しているというニュースを見ると、会社の将来を心配する人もいると思います。
もちろん、会社側には人員構成の見直しなど、さまざまな事情があるのでしょう。
しかし、社員側から見れば、早期退職優遇制度が必ずしも悪い話とは限りません。
私のように、仕事を辞めたいと思っている人にとっては、退職金の上乗せを受けながら会社を辞められるチャンスにもなります。
実際、私はこの制度がなければ、49歳で辞めることはできなかったと思います。
その後も、まだ働いていたかもしれません。
ただし、制度があるからといって、すぐに応募すればいいというものでもありません。
43〜44歳のときの私は、生活資金が足りなかったので応募しませんでした。
49歳のときは、退職後の生活が成り立つと判断できたので応募しました。
そして、51歳のほうが条件が良かったと知っても、49歳で辞めて良かったと思っています。
大切なのは、退職金がいくら増えるかだけではありません。
自分が辞めた後、どのように生活していくのか。
そこまで考えて、判断することだと思います。
まとめ:退職金よりも大切なのは、その後の人生設計
私は、早期退職優遇制度を利用して49歳で会社を辞めました。
退職してから7年以上が経ちましたが、今でも辞めて良かったと思っています。
ただ、それは退職金の上乗せ額が大きかったからだけではありません。
41歳頃からライフプランを作り、辞めた後の生活を考えてきたからです。
もし今、早期退職優遇制度への応募を考えている人がいるなら、まず退職後の生活を具体的に計算してみてほしいと思います。
再就職するつもりなら、本当に希望する仕事が見つかる見通しがあるのか。
再就職できなかった場合でも、生活できるのか。
退職金を使って高額な買い物をしても、その後の生活費は足りるのか。
そういったことを、できるだけ具体的に考えておくことが大切です。
早期退職でも、定年退職でも同じだと思います。
退職金は、長年働いてきた結果として受け取る大切なお金です。
だからこそ、一時的な気持ちで使ってしまうのではなく、これからの人生を支えるお金として考えておきたいものです。
退職金をいくらもらえるかよりも、そのお金で退職後の人生をどう生きていくのか。
私は、そこが一番大切だと思っています。


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