人生には、「あのときは最悪だった」と思う出来事があります。
受験に失敗した。
就職できなかった。
仕事で失敗した。
思い通りにならなかった。
その瞬間は、「運が悪かった」と思うかもしれません。
でも、その出来事が本当に不運だったのかどうかは、そのときには分からないのではないでしょうか。
私には、そんな経験があります。
私は高校卒業後、国立大学への進学を希望していました。
しかし、現役では不合格でした。
当然、当時の私にとっては、うれしい出来事ではありません。
ところが今、56歳になって人生を振り返ってみると、
「あのとき大学に落ちたことは、本当に運が悪かったのだろうか?」
と思うことがあります。
なぜなら、大学に落ちたことで浪人し、その浪人中に出会った一人の社長さんが、その後の私の人生を大きく変えたからです。
私は「何もできない子供」だと思っていた
私は小さいころから、
「あなたは何もできない」
というようなことを親から言われて育ちました。
そのため、自分に自信がありませんでした。
何か新しいことに挑戦してみようとか、自分から積極的に何かをやってみようという性格でもありませんでした。
自分自身が、
「自分は何もできない人間なんだ」
と思っていたのだと思います。
そんな私が国立大学の受験に失敗しました。
そして浪人生活が始まりました。
その浪人中に、私はアルバイトを始めます。
そこで出会ったのが、その会社の社長さんでした。
「あなたは何でもできる。やってごらん」
その社長さんは、それまで私が言われてきたこととは、まったく反対のことを言いました。
「あなたは何でもできる。やってごらん」
最初はどう思ったのか、もう詳しくは覚えていません。
ただ、社長さんに背中を押されて、いろいろなことをやってみました。
すると、できるんです。
やってみたらできた。
また別のことをやってみたら、それもできた。
そういう経験を重ねるうちに、
「あれ? 自分はやればできるんじゃないか」
と思うようになりました。
それまでの私は、「自分にはできない」と思っていたから、そもそもやろうとしなかったのかもしれません。
この社長さんとの出会いによって、私の性格というか、生き方や考え方は大きく変わったと思います。
一番背中を押してもらったのは就職活動だった
その中でも、特に印象に残っているのが就職活動です。
就職活動をするとき、社長さんから言われました。
「あなたが落ちるのであれば、他の全員落ちる。自信を持って面接を受けてきなさい」
ものすごい言葉ですよね。
それまで自分に自信がなかった私に、そこまで言ってくれる人がいた。
私は、その言葉に勇気をもらいました。
そして、面接の練習もほとんどせずに就職活動に臨みました。
格好よく見せようともせず、面接ではそのままの自分を話しました。
結果はどうだったか。
面接を受けたほとんどの会社から、内定をもらうことができました。
これは私にとって、かなり大きな出来事でした。
社長さんから、
「あなたならできる」
と言われた。
実際にやってみた。
そして、本当にできた。
「自分はやればできる」
そう思えるようになった経験の一つだったと思います。
もし国立大学に合格していたら
ここで、ときどき考えることがあります。
もし、あのとき国立大学に合格していたら、私の人生はどうなっていたのだろう。
現役で大学に合格していれば、浪人はしていません。
浪人していなければ、あのアルバイトもしていなかったでしょう。
アルバイトをしていなければ、あの社長さんにも出会っていません。
そうすると、
「あなたは何でもできる。やってごらん」
と言ってくれる人にも出会わなかったかもしれません。
自分に自信を持てないまま、その後の人生を歩いていた可能性もあります。
もちろん、分かりません。
現役で国立大学に合格していたら、そこで別の素晴らしい人に出会って、今以上に幸せな人生になっていた可能性だってあります。
歩かなかった人生を見ることはできません。
だから、どちらが良かったのかを比べることはできません。
大学に落ちたのは「運が悪かった」のか
当時の私からすれば、大学に落ちたのは失敗です。
頑張って受験勉強をした。
でも、希望していた大学には合格できなかった。
その瞬間だけを見れば、
「努力したのに報われなかった」
という話です。
でも、その後まで含めると見え方が変わります。
大学に落ちた。
だから浪人した。
浪人したからアルバイトをした。
アルバイトをしたから社長さんに出会った。
社長さんに出会ったことで、自分に対する考え方が変わった。
その後の人生にも、その考え方は影響していると思います。
そして私は49歳で会社を辞めました。
早期退職して7年以上たった今、私は毎日幸せに暮らしています。
そう考えると、
あのとき大学に落ちたことは、本当に運が悪かったのでしょうか。
私には分かりません。
人生は努力で変わるのか。それとも決まっているのか
私は最近、こんなことを考えることがあります。
世の中には、運がいい人もいれば、運が悪い人もいます。
裕福な家庭に生まれる人もいれば、そうではない家庭に生まれる人もいる。
生まれたときから健康な人もいれば、そうではない人もいる。
人によって、最初から条件が違います。
なぜ、こんなに違うのでしょう。
そして、人生はどこまで自分の力で変えられるのでしょうか。
努力すれば、自分の求める人生にできるのか。
それとも、人生は最初からある程度決まっているのか。
私は、いまだに分かりません。
49歳で早期退職できたのは、私が努力したから?
私が49歳で早期退職できたことについても同じです。
私は自分なりに準備しました。
お金を貯めました。
これから必要になる生活費を考えました。
ライフプランも作りました。
どうすれば会社を辞められるのか、自分なりに考えました。
投資もしてきました。
ですから、
「何もしなかったけれど、運よく49歳で早期退職できました」
という話ではありません。
自分でできることは、それなりにやったと思っています。
でも、
「すべて自分の努力で手に入れた人生だ」
とも思いません。
自分の努力だけでは、どうにもならないこともたくさんあります。
現実に49歳で会社を辞めることができ、その後も幸せに生活できている。
そう考えると、私は運にも恵まれていたのでしょう。
努力すれば必ず報われる、とは思わない
私は、
「努力すれば必ず報われる」
とは思っていません。
頑張っても、うまくいかないことはあります。
私自身、国立大学を目指して頑張りましたが、不合格でした。
努力したからといって、必ず自分が望んだ結果になるわけではありません。
でも、さらに難しいのは、
「望んだ結果にならなかったことが、本当に悪いことなのかも分からない」
ということです。
私の大学受験がそうでした。
当時は、合格することが「良い結果」で、不合格になることが「悪い結果」だったはずです。
ところが何十年もたって振り返ると、その不合格があったから今の私がいるのかもしれない。
人生というのは、その瞬間だけでは、何が良くて何が悪いのか判断できないことがあるのだと思います。
今の私は「人事を尽くして天命を待つ」でいいと思っている
では、人生が決まっているのなら、何をやっても同じなのでしょうか。
私は、そういう考え方は少し寂しいと思っています。
仮に人生がある程度決まっているとしても、自分なりにいろいろやってみたい。
考えてみる。
努力してみる。
失敗する。
また考える。
その方が未来があるように感じますし、人生として面白いような気がします。
だから今のところ、私が一番しっくりくるのは、
「人事を尽くして天命を待つ」
という言葉です。
自分でできる範囲のことはやる。
努力できることは努力する。
考えられることは考える。
準備できることは準備する。
でも、その結果どうなるかまでは、自分には決められない。
そこから先は、どうしようもない。
私は今のところ、それくらいの考え方でいいのではないかと思っています。
もちろん、これが正解なのかどうかも分かりません。
悪い出来事が、本当に悪い出来事なのかは分からない
人生には、これからも思い通りにならないことがあると思います。
そのときは、
「なんでこんなことになったんだ」
と思うかもしれません。
私もそうだと思います。
だからといって、
「悪いことが起きても、必ず後で良いことにつながる」
などと言うつもりもありません。
そんなことは誰にも分かりません。
ただ、少なくとも私の人生には、
当時は失敗だと思っていたことが、後になって振り返ると、今の人生につながっていたと思える出来事がありました。
国立大学に落ちたことです。
あのころの自分に会えるなら
もし今の私が、国立大学に落ちた直後の自分に会えるとしたら、何と言うでしょうか。
たぶん、
「大丈夫。これでいい方向に行くから。いい人生になるから」
と言うと思います。
あのときの私は、これから浪人して、アルバイト先で一人の社長さんに出会うことを知りません。
その人から、
「あなたは何でもできる。やってごらん」
と言ってもらえることも知りません。
その言葉によって、自分に対する考え方が変わっていくことも知りません。
そして何十年か後に、49歳で会社を辞めて、毎日を幸せに暮らしていることも知りません。
人生が最初から決まっているのか。
自分の努力で切り開いているのか。
運がどれくらい影響しているのか。
今でも私には分かりません。
もしかすると、その全部が少しずつ関係しているのかもしれません。
だから私は、これからも答えが分からないまま、
自分にできることはやってみる。
そして、結果については受け入れる。
そんなふうに生きていけばいいのかなと思っています。


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