仕事が嫌で49歳で早期退職した私が、それでも若い人には「一度は働いた方がいい」と思う理由

人間関係・家族・孤独

私は49歳で会社を辞めました。

早期退職してから7年以上たちますが、「もう一度会社員として働きたい」と思ったことはありません。

今の生活が気に入っていますし、生活できるのであれば、このまま働かずに暮らしていきたいと思っています。

そんな私ですが、もし若い人から、

「働かなくても生活できるだけのお金があれば、一度も就職しなくていいと思いますか?」

と聞かれたら、おそらくこう答えます。

「一度くらいは社会に出て働いてみた方がいいんじゃない」

仕事が嫌で早期退職した人間が、「若い人は働いた方がいい」と言う。

矛盾しているように聞こえるかもしれません。

でも、私の中では矛盾していません。

今回は、会社員にはもう戻りたくない私が、それでも一度は働いてみた方がいいと思う理由について書いてみます。

仕事をすることが人生の目的だとは思っていない

最初に書いておきますが、私は、

「人間は働かなければならない」

とは思っていません。

働きたい人は働けばいいと思います。

仕事が好きで、70歳でも80歳でも働きたいのであれば、それもその人の人生です。

反対に、十分なお金があって、もう仕事をしたくないのであれば、辞めてもいいと思っています。

実際、私は49歳で辞めました。

だから、

「若い人には一度働いた方がいい」

というのも、

「65歳まで会社員を続けるべきだ」

という意味ではありません。

私が一度は働いた方がいいと思うのは、社会に出て実際に経験してみないと分からないことがあると思うからです。

自分でお金を稼ぐ経験はしておいた方がいい

今の社会では、生きていくためには基本的にお金が必要です。

食べるにもお金がかかる。

家に住むにもお金がかかる。

服を買うにも、電気を使うにも、遊びに行くにもお金が必要です。

そのお金を、自分で働いて稼いでみる。

私は、この経験はしておいた方がいいと思っています。

もちろん、今は会社員以外にもいろいろな稼ぎ方があります。

それでも若いうちは、一度社会に出て、自分の力で働いてお金をもらう経験をしてみる。

お金はどうやって稼ぐのか。

働いて給料をもらうとはどういうことなのか。

実際に経験することで分かることがあると思います。

大人になってからの人間関係は、子供のころとは違う

もう一つは、人間関係です。

学校にも人間関係はあります。

友達もいれば、先生もいます。

嫌いな人がいることもあるでしょう。

でも、社会に出てからの人間関係は、それまでとは少し違うと思います。

会社には、いろいろな人がいます。

年齢も違う。

育った環境も違う。

考え方も違う。

立場も違う。

上司もいれば、部下もいる。

お客さんもいます。

そして、大人の世界には本音と建前もあります。

自分が好きな人とだけ付き合っていればいいわけでもありません。

そういう人たちと実際に接することで、

「世の中には本当にいろいろな人がいるんだな」

と分かってきます。

これは私自身、会社員を経験したから分かったことの一つです。

会社員時代に学んだ「他人を自分の物差しで測らない」ということ

会社員として働いて学んだことはいろいろあります。

その中で一番大きかったものは何かと聞かれたら、私は、

「他人を自分の物差しで測らない」

ということを挙げると思います。

それを強く感じたのは、私がチームリーダーになり、部下を持ったときでした。

その中に、あまり仕事ができない部下がいました。

当時の私から見ると、

「何をやっているんだ」

と思うこともありました。

でも、しばらくその部下を見ていて、あることに気づきました。

彼は彼なりに、一生懸命やっていたのです。

私の「5」は、彼にとっての「10」だった

例えば、人が持っている力を10とします。

その部下は、自分の持っている10の力のうち、10を使って仕事をしていました。

手を抜いているわけではありません。

本人なりに全力です。

ところが、私の物差しで彼を見ると違います。

彼の10は、私の物差しで測れば5くらいにしか見えない。

だから私は、

「5しかやっていないじゃないか」

と思ってしまう。

でも、本人は10やっているのです。

これに気づいたとき、

「自分の物差しで相手を見てはいけないんだな」

と思いました。

「なんでできないんだ」と言っても仕方がない

本人が10のうち5しか出していないのであれば、

「もっとやろうよ」

という話になるのかもしれません。

でも、その部下は10のうち10を出していました。

だったら、

「なんで10を出さないんだ」

と責めても仕方がありません。

もう10を出しているのですから。

それよりも私がやるべきなのは、

その人が持っている10という物差しそのものを、15、20と伸ばしていくこと

だと思いました。

まずは本人に任せてみる

では、どうやって物差しを伸ばしたのか。

最初にやったのは、本人に任せることでした。

まず、やってもらう。

その後で、

「何をやったの?」

と確認する。

そして結果を見る。

うまくいかなければ、

「何ができなかったのか」

を一緒に考える。

そして、

「じゃあ、次は何をする?」

と聞く。

これを繰り返しました。

仕事ができない人は「次の一手」が少ないことがある

その部下を見ていて感じたのは、途中で手詰まりになることでした。

本人なりに一生懸命考えている。

でも、

「次に何をすればいいのか分からない」

となる。

経験が少ないので、持っている打ち手が少ないのです。

私はこれも「物差しが短い」という感覚で見ていました。

そこで手詰まりになったら、

「こういうやり方もあるよ」

と、次の打ち手を一つアドバイスする。

本人がそれをやってみる。

また結果を見る。

うまくいかなければ、また考える。

そうやって少しずつ「やり方」の引き出しを増やしていきました。

10だった物差しが15、20と伸びていった

新しいやり方を覚えれば、以前なら手詰まりになっていたところで、もう一つ試せるようになります。

また別のやり方を覚えれば、さらに選択肢が増えます。

私が10だと思っていたその人の物差しが、

10から15へ。

15から20へ。

少しずつ伸びていきました。

すると、当然ですが結果も出始めます。

ここから先は面白いものでした。

結果が出ると、本人も仕事が面白くなってくるのです。

結果が出ると、自分から他人のやり方を盗むようになった

仕事がうまくいくようになると、今度は私が教えなくても、自分で周囲を見るようになりました。

「あの人はどうやっているんだろう」

「あの方法は使えるんじゃないか」

と、仕事のできる人のやり方を自分から盗むようになったのです。

そうなれば、こちらがいちいち教える必要はありません。

本人が自分で学びます。

自分で試します。

また結果が出ます。

すると、さらに面白くなって、自分から勉強する。

放っておいても物差しがどんどん伸びていくようになりました。

その部下は、後にリーダーになった

その後、私がチームリーダーを外れました。

そして、私の後にリーダーになったのが、その部下でした。

最初に私が、

「仕事があまりできないな」

と思っていた人です。

だからといって、

「私が彼をリーダーに育てた」

とは思っていません。

私がやったことなんて、最初のほんの少しだけです。

イメージとしては、

最初の一転がりを作っただけ。

少しだけ転がした。

すると本人がコツをつかんで、そこからは勝手にコロコロ転がっていった。

そして、転がりながらどんどん大きくなった。

そんな感じです。

最終的にリーダーになれたのは、本人が自分で伸びていったからだと思っています。

振り返ると、私も同じことをしてもらっていた

この話をしていて、改めて気づいたことがあります。

実は私自身も、若いころに同じような経験をしています。

私は現役時代、希望していた国立大学に不合格になりました。

浪人することになり、その浪人中にアルバイトを始めました。

そこで出会った会社の社長さんが、その後の私の考え方を大きく変えた人でした。

私は子供のころから、自分に自信がありませんでした。

ところが、その社長さんは私に、

「あなたは何でもできる。やってごらん」

と言ってくれました。

そして、実際にやってみるとできた。

そこで初めて、

「自分はやればできるんだ」

と思えるようになりました。

社長さんが私を転がし、今度は私が部下を少し転がした

考えてみれば、その社長さんも、私の人生をずっと引っ張ってくれたわけではありません。

最初に、

「やってごらん」

と背中を押してくれた。

その最初の一転がりが、私にとって大きかったのだと思います。

そして何年もたって、今度は私が部下を持った。

「なんでこんなこともできないんだ」

と見放すのではなく、

「この人は、この人の10の中では10を出しているんだ」

と考えた。

そして、少しだけ次の打ち手を渡した。

それができるようになったら、また次へ進む。

やがて本人が自分で転がるようになった。

今振り返ってみると、浪人時代に出会った社長さんの考え方が、知らないうちに私の中にも残っていたのだと思います。

だから私は、会社員時代が無駄だったとは思わない

私は会社員生活が嫌で、49歳で早期退職しました。

40歳のころはかなりつらい時期でもありました。

今、40歳に戻れると言われても、私は戻りたくありません。

会社員にも戻りたくありません。

でも、

「だったら会社員として働いた時間は全部無駄だったのか」

と聞かれたら、それも違います。

会社で働いたから経験できたことがありました。

いろいろな人と出会いました。

自分とはまったく違う考え方の人とも仕事をしました。

部下を持つ経験もしました。

そして、

「他人を自分の物差しで測ってはいけない」

ということも知りました。

これは、実際に社会に出て働かなければ、私は分からなかったかもしれません。

だからといって65歳まで働く必要はない

ここは分けて考えた方がいいと思います。

私は若い人には、一度くらい社会に出て働いてみた方がいいと思っています。

でも、

「だから65歳まで働き続けなさい」

とは思いません。

例えば22歳で会社に入り、10年間働いた。

32歳になった。

その間に社会のこともある程度知った。

大人同士の人間関係も経験した。

自分でお金を稼ぐことも覚えた。

さらに、もう働かなくても生活できるだけの資産まで自分で作った。

本人も、

「もう仕事を辞めたい」

と言っている。

それなら私は、

「好きにしたらいいんじゃない」

と思います。

まだ32歳だから働かなければならない、とは思いません。

「働くことには意味がある」と「働き続けるべき」は違う

私は、ここを混同しなくてもいいと思っています。

働くことで得られる経験はあります。

社会の仕組みを知る。

自分でお金を稼ぐ。

大人の人間関係を経験する。

自分と違う人と付き合う。

誰かに仕事を教える。

失敗する。

うまくいく。

そういう経験には意味があると思います。

でも、

働くことに意味があるから、一生働き続けなければならない

ということにはならないでしょう。

十分経験したと思えば、別の生き方を選んでもいい。

仕事が好きなら続ければいい。

嫌なら、辞められる準備をすればいい。

その後どう生きるかは、本人が決めればいいと思います。

仕事は嫌だった。でも、働いたことを後悔しているわけではない

私は49歳で会社を辞めました。

そして今、働かない生活を楽しんでいます。

もう一度会社員になりたいとは思いません。

だからといって、

会社員になったことそのものを後悔しているわけではありません。

会社員だったから経験できたことがあります。

そこで学んだこともあります。

何より、いろいろな人と出会いました。

中には、自分とはまったく違う人もいました。

そして、そういう人たちと関わったからこそ、

自分の物差しだけで他人を判断してはいけない

ということにも気づけたのだと思います。

若いころの私には、分からなかったことです。

だから、もし若い人から、

「働かなくても生活できるなら、一度も就職しなくていいですか?」

と聞かれたら、私は、

「一度くらいは働いてみてもいいんじゃない」

と言うと思います。

そして、その人が十分に社会を経験したあとで、

「もう働かなくても生活できるし、仕事も辞めたい」

と言うのであれば、

今度は、

「じゃあ、好きに生きればいいんじゃない」

と言うと思います。

私は仕事が嫌で早期退職しました。

それでも、働いたからこそ分かったこともたくさんあります。

働いてみることと、働き続けることは別の話。

今の私は、そんなふうに考えています。

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