ニュースを見ていると、日本の国債残高が増えているという話をよく耳にします。
そして、
「国民一人あたりにすると○○万円の借金」
といった表現もよく使われます。
私は経済の専門家ではありません。
ただ、こういうニュースを見ていて、ふと疑問に思ったことがあります。
国債って、本当に全部返さないといけないのでしょうか?
今回は、この素朴な疑問について自分なりに考え、少し調べてみました。
国債を全部返すなら、どうやって返すのだろう?
国債が「国の借金」であり、それを減らさなければならないというのであれば、どうやって減らすのでしょうか。
新しい国債を発行して、満期になった古い国債を返しても、新しい国債が残ります。
これでは国債全体がなくなるわけではありません。
本当に国債残高を減らしていくのであれば、例えば国民や企業から税金を集め、そのお金を使って返していく必要があるのではないか。
そんなことを考えました。
でも、そこでまた疑問が湧きました。
そこまでして、国債を全部なくす必要があるのでしょうか?
実際には、新しい国債で古い国債を返している
調べてみると、日本では満期を迎えた国債を、すべて税金などで現金償還しているわけではありません。
「借換債」という国債を発行して、償還資金の一部に充てています。
財務省によると、日本には「60年償還ルール」があり、例えば600億円の10年国債なら、10年後に100億円を現金償還し、残り500億円は借換債を発行する、という仕組みです。これを繰り返し、当初発行した国債について60年で現金償還する考え方になっています。
しかも借換債の金額はかなり大きなものです。
財務省の2026年度の仮定計算では、約150.3兆円の要償還額に対し、借換債収入は約132.3兆円となっています。
つまり、
「満期が来た国債を返すこと」と「国全体の国債残高をゼロにすること」は、同じ話ではない
ということです。
ここを私は混同していました。
「国民一人あたりの借金」という表現にも違和感がある
もう一つ気になったのが、
「国民一人あたり○○万円の借金」
という表現です。
確かに政府の債務を人口で割れば、そういう数字を出すことはできます。
しかし、だからといって私のところに国から請求書が来て、「あなたの分を返してください」と言われるわけではありません。
そもそも国債は、政府から見れば負債ですが、国債を持っている人から見れば資産です。
そう考えると、
国の借金=そのまま国民一人ひとりの借金
と考えるのは、少し違うのではないかと思いました。
国債を全部返したら、お金はどうなるのだろう?
私が一番疑問に思ったのはここです。
仮に政府が、
「国債は借金だから、全部返そう」
と考えたとします。
新しい国債を発行して返したのでは、国債残高は減りません。
では、国民や企業から大量の税金を集めて返すのでしょうか。
そうすると、民間から政府へ大量のお金が移ります。
「そんなことをしたら、世の中のお金が減ってしまうのではないか?」
と私は考えました。
ただし、ここは少し注意が必要でした。
国債を減らした金額と、世の中のお金が減る金額が、そのまま同じになるわけではありません。
世の中のお金には現金だけでなく銀行預金などもあります。国債残高とマネーストックは別のものとして考える必要があります。日銀もマネーストックを独立した統計として公表しています。
ですから、
「国債を全部返したら、日本からお金がなくなる」
と単純に言うのは間違いでしょう。
それでも、国債を減らすために大幅に税金を増やせば、民間が自由に使えるお金を減らし、需要を抑える方向に働くことは考えられます。
そうなると私は、
国債を減らすこと自体を目的にするのは、本当に正しいのだろうか?
と思うのです。
そもそも世の中のお金は国債だけで増えるわけではない
ここも今回調べて、私自身が整理できたところです。
私は当初、
「経済が大きくなって世の中に必要なお金が増えるなら、国債を発行してお金を増やす必要があるのではないか」
と考えていました。
しかし、世の中のお金は政府の国債発行だけで増えるわけではありません。
銀行が企業や個人に融資することによっても、銀行預金という形のお金が生まれます。
逆に、借りたお金が返済されれば、その部分は減っていきます。
つまり、国債発行だけが世の中のお金を増やす仕組みではないということです。
ここは、私が最初に考えていたことを修正する必要がありました。
国債残高の「金額」だけを見ても分からないのではないか
それでも私は、国債残高の絶対額だけを見て、
「こんなに増えた。大変だ」
と考えることには、少し疑問があります。
昔に比べれば、日本の国債残高はかなり増えています。
それなら、どこまで増えたら危険なのでしょうか。
1,000兆円でしょうか。
1,200兆円でしょうか。
1,500兆円でしょうか。
私には分かりません。
むしろ重要なのは、経済全体の大きさとの関係や、金利、インフレなどではないかと思います。
実際、政府の2026年の財政運営でも、「国債をゼロにする」ことではなく、債務残高対GDP比を安定的に低下させることが中核的な目標とされています。
だからといって、日本の国債残高が問題ではないという意味ではありません。
財務省も、日本の政府債務はGDPのおよそ2倍という高い水準にあり、財政の持続可能性や市場からの信認を確保することが重要だとしています。
私が疑問に思っているのは、
「国債が多い=全部返さなければならない」
という単純な話なのだろうか、ということです。
問題になるのは、インフレではないのか
では、国債はいくら発行してもいいのでしょうか。
私は、それも違うと思っています。
例えば、政府が大量に国債を発行して、そのお金をどんどん国民に配ったとします。
国民が一斉にそのお金を使えば、需要が急激に増えます。
しかし、商品やサービスを供給する能力がそれに追いつかなければ、物価が上がっていくでしょう。
コロナ禍のアメリカでは、非常に大規模な政策支援が行われました。その後のインフレは財政政策だけが原因ではなく、エネルギー価格や供給網の混乱など複数の要因が重なっていますが、IMFも強い政策刺激による急速な需要回復と、供給制約などがインフレ加速につながったと分析しています。
ですから、
国債をどれだけ発行したかだけではなく、そのお金によってどれだけ需要が増え、供給力とのバランスがどうなっているのかを見る必要があるのではないか
と私は考えています。
不景気なら、逆に政府がお金を使う必要があるのではないか
反対に、不景気になったとします。
国民がお金を使わない。
企業も設備投資をしない。
需要がどんどん減っていく。
そんなときまで、
「国債が多いから政府もお金を使わない」
ということでいいのでしょうか。
私は、不景気で民間の需要が弱いときには、政府が国債を発行してお金を使い、需要を作ることも必要なのではないかと思っています。
政府が需要を作り、それによって企業の商品やサービスが売れるようになる。
将来も需要があると企業が判断すれば、新しい設備に投資したり、人を雇ったりすることにつながるかもしれません。
もちろん、政府がお金を使えば必ずそうなるという単純な話ではないでしょう。
何に使うかも重要です。
それでも、不景気のときに政府まで支出を減らしてしまったら、さらに需要が減ってしまう可能性があります。
逆に景気が過熱したら、国債発行を抑える
反対に、景気が良くなり、民間の需要が十分にある。
さらに需要が増えて物価がどんどん上がっている。
そういう状況なら、政府は国債発行を抑えた方がいいのではないでしょうか。
場合によっては税金を増やすなどして、過剰な需要を抑える必要もあるかもしれません。
私が今のところ考えているのは、
不景気なら政府が需要を補い、景気が過熱しているなら政府が需要を抑える。
国債についても、そのように景気や物価を見ながら考えるものではないか、ということです。
「国債はいくらあるか」だけで考えなくてもいいのでは?
最初は単純な疑問でした。
「国債って、本当に返さないといけないの?」
調べてみると、もちろん満期になった国債は償還しなければなりません。国が「返しません」と言っていいわけではありません。
しかし、満期になった国債を償還することと、政府の国債残高をいつかゼロにすることは別の話です。
実際、日本では借換債を発行しながら国債を償還しています。2026年度についても、財務省は巨額の借換債発行を前提とした資金繰りを示しています。
そう考えると、
「国民一人あたり○○万円の借金だから大変だ」
という数字だけでは、国債の問題を十分に理解できないように思います。
大切なのは、国債残高だけではなく、経済規模、景気、物価、金利、そして政府が調達したお金を何に使っているのかを見ることではないでしょうか。
私は経済の専門家ではありませんので、これが正解だと言うつもりはありません。
ただ、ニュースを見ながら、
「国債は借金なんだから、いつか全部返さなければならない」
と当たり前のように考えていたことについて、
「本当にそうなのかな?」
と疑問を持つようになりました。
国債を増やし続ければいいとも思いません。
しかし、国債残高を減らすことだけが正解とも思えません。
景気が悪いときと、インフレで景気が過熱しているときでは、政府が取るべき行動も違うはずです。
国債の金額だけを見るのではなく、そのときの日本経済がどのような状態なのかと一緒に考える。
今回調べてみて、少なくとも私は、そういう見方をした方がいいのではないかと思うようになりました。


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